宗門の明日を考える会

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「宗門の明日を考える会」2025年度 研修会・協議会 報告

  二〇二六年三月四日(水)十四時より、宗門の明日を考える会「二〇二五年度研修会・協議会」が大阪津村別院二尊堂において27名の参加を得て開催されました。以下、当日の進行に沿って簡略ながらご報告いたします。

(1)共同代表挨拶・活動10年の総括

まず、共同代表の武田達城より「活動十年の総括」と題した問題提起がなされました。

 はじめに会の活動の経緯が振り返られました。二〇一六年、伝灯奉告法要にあたって全寺院に門主の額入り写真と献金要請が届いたことが契機となります。武田は「何かおかしいな、という違和感がありました」という思いを持ち、仲間とともに津村別院に集まり「門主の写真返還運動協議会」を立ち上げました。そして、翌二〇一七年二月に「宗門の明日を考える会」の設立総会を経て、宗務所への写真返還、行事部長・総長への質問状・要望書の送付、機関誌『檄』(現在第七号まで発行)の刊行、研修会の開催、女性会員交流会の定期開催と、十年の歩みが時系列で確認されました。

 こうした活動の背景として、二〇一二年の宗本分離のさいに結成された「宗法を考える会」や共同代表梯良彦が所属する大阪教区住吉組の教区に対する門主制を考えるための「要望書」の提出など、長年にわたる学びの蓄積があったことが強調されました。しかし、会の活動がどれだけ外部の人に周知できたかについては課題が残るとの問題も提起されました。

 次に会の名称についての問題提起がありました。「宗門の明日を考える会」という「宗門」という語については、「宗門改を連想する」「封建的な匂いがする」という批判がこれまでも届いていたことが紹介されました。これに対して武田は、「そろそろ普通名詞から固有名詞に替える方がいいんじゃないかと思っています。親鸞聖人が後序で弾圧した犯人の名前を『後鳥羽』とはっきり書いているように、たとえば『本願寺派の明日を考える会』としたらどうか」と提案しました。

最後に「血統門主制を課題とする」という会の立場をより鮮明にしながら活動を続けていくことへの意志が示され、名称変更を含む今後の議論が参加者に呼びかけられました。

(2)会員による意見表明(小武正教)

続いて、会員の小武正教氏より「門主制と天皇制」をテーマとした意見表明がなされました。

小武氏は「門主制と天皇制ということを考えないといけないと思っています。門主制が先にあって、天皇制が明治に絶対天皇制としてできてくる」と述べ、両者が構造的に連動してきたことを指摘しました。また「十年早く、英国議会に先立って本願寺は宗会を開いた」という言葉を引きながら、「国の状況と無関係で門主制、法主制があるわけではない」と強調しました。

 宗本分離について小武氏は「二〇一二年から後は本願寺が、自分で集めたお金の一部を宗派に渡すという力関係、上下関係に逆転している」と述べ、門主の権限強化と宗会の形骸化への懸念を示しました。

 また「基幹運動」の限界についても率直に語られました。「私たちの基幹運動の唯一の、というか最大の欠点は、門主の『消息』の下での運動だったというその限界を持っているということです。最後には門主の『消息』、門主の言葉によって、基幹運動は潰された」との言葉が述べました。

最後に小武氏は「門主制というのは遠い話ではないとずっと思っている。そんな矛盾をそのままにして、次に引き継がせていくようなことで果たしてこれからお寺が続いていくのか。そこからの解放が、私自身にとって門主制を問うという一番の出発点だった」と語りました。

(3)全体協議会

以上の問題提起を受けて、参加者による全体協議会が行われました。活発な意見交換の中から、主に以下の意見が示されました。

①新年の『文化時報』への会の広告に「血統門主制を課題とする」という表記が加わったことへの評価が述べられました。「最初見た時に『おっ』と思いました。いよいよこれを付けられたな、逃げ場のないところを掲げられたな、と思いました」との言葉がありました。

②「三業惑乱」以降に門主が「安心裁断権」を持つに至った歴史的経緯について、「本願寺派では三業惑乱で安心裁断権を持った。それまでは門主は象徴だったのか」という問いが提起されました。小武氏からは「明治の天皇制は本願寺派の法主制をモデルにした」との見解が示されました。

③内陣の七高僧と聖徳太子の配列についての質問がありました、梯より「最初は七高僧が上座、聖徳太子が下座で掲げられていた。戦争中にそれが不敬だということで配置が逆になった。戦後、それが無効になったが、『戻しなさい』という通達が無かった」との回答がありました。また、「親鸞・蓮如となっているのは法統より血統を重視している表れではないか」との指摘があり、梯は「法式規範を変えていくような発信を会としてできるし、会員同士で『こんなことをしている』と報告し合える場もつくれるのではないか」と応じました。

④教団内のジェンダーの問題についてもさまざまな意見が交わされました。「組の婦人会という名称を女性会という名称に変更した」という報告が女性会員よりなされ、「この業界は上からの上意下達に慣れているので名称変更が大変だった。この会では他とは少し違った面白いことを提案し議論できるような場所を作っていってほしい」との要望がなされました。また、会の「女性会員交流会」について梯より「女性会員からの声を丁寧に聴いたうえで、我々事務局が動いていくという形にしていきたい。」との提案があり了承されました。また、「教団の取り上げるジェンダーの問題では門主制までいかない。それができるとすれば、この会だけだと思う。地方の寺ではジェンダーの問題はより厳しい。門主制と各寺院のジェンダーに関する問題はつながっている」という意見もありました。

⑤現行の賦課金制度について、会としてどのように対応していくべきか、という問題提起がなされました。梯は「現状の賦課金制度を批判し、より公平な賦課金制度を皆で考え提案していくということができればいい」と述べました。

⑥護持口数・門徒戸数の制度について「本山の届け出門徒戸数の元になっている名簿は大正時代のものであり、すべて修正しなければ変更ができない。この変更をもっと簡単にできるような提言はできないものか」との問題提起がありました。武田は護持口数調整の実態を「ある宗会議員はこれを『ザルの中のドジョウ』と呼んでいます。ザルの中のドジョウは、俺さえ助かりたいと逃げようとする。一匹逃げれば、他のドジョウが捕まる。お寺同士でそんなことをさせるわけです」と述べました。

⑦宗本分離についてどう思うか、という質問がありました。これに対して、梯は「明確に反対である。この制度改革によって門主の権限が強くなっていくのがわかっていた。賦課金は必ず上がると言ってきた。十年が経ってまさにそういう状況となっている。今でも宗本分離は間違っていると考えている」と述べました。また、女性会員からは「宗会の力を削ぐことによって、女性の宗会議員がいないというジェンダーの問題も隠されてしまう」との指摘もありました。

⑦会員より「今日、話に出た内陣の問題、宗本分離、そしてジェンダーの問題でも突き詰めていくと血統門主制に向かっていくと思う。現実の課題から血統門主制を問うていくこともできるのではないか。今日のように会員が自分の課題を意見として出し合うような時間を定期的に持ってほしい」との提言がありました。

 これらの意見を受けて、幹事の梯より次のようなまとめがなされました。

 それぞれの会員が持つ課題意識を突き詰めていくなかで血統門主制について考えていくという視点はとても大事だと改めて感じた。そのような視点を忘れずに会の活動を続けていきたい。会員の皆様からは、ぜひさまざまな課題に対する会の活動の企画書などを作って頂き提案をしてほしい。

【閉会挨拶】

閉会にあたり、幹事の福本群より挨拶がありました。「この会は勉強になるなあと思いながら、でも勉強で終わってはいけないなということも、改めて強く思った次第であります」との言葉で始まり、クレヨンの「肌色」の名称が「うすだいだい」や「ペールオレンジ」へと変わっていったことを例に「物事をどう表現するのか、多様性を認めて、自分たちがどういうふうなものを出していくのかを考えた上で変更されたんだろうな、と非常にありがたいなと思いました。現実の課題を踏まえて歩んでいくこと、そういうところからもこの会の活動を大切したいと思っております」と述べ、閉会いたしました。

 閉会後、18名が参加して懇親会が開催されました。全国から集まった会員が、それぞれの問題意識を活発に語り合い、にぎやかながらも和やかな懇親会となりました。

 

「宗門の明日を考える会」第六回総会・研修会報告

 2025710日(木)14時より、総会・研修会が津村別院二尊堂において開催されました。早過ぎる猛暑のなか、37名のたくさんの会員の皆さまに集まっていただきました。厚く御礼申しあげます。以下、当日の進行に沿って簡略ながらご報告いたします。

 

一、総会

 

 はじめに、共同代表の武田達城が以下のような挨拶をいたしました。

 

 2016年に門主の写真が配られたことによって活動を始めたこの会も10年目を迎えることになりました。この会の発足当初より、門主制を始めとしたさまざまな宗門の課題に対する勉強会を開催してほしいという要望がたくさん寄せられており、今回は元毎日新聞記者である田原由紀雄さんを講師にお招きしました。以前から『東本願寺三十年紛争』という書籍は読んでいましたが、直接お話を聞くのは初めてで、とても楽しみにしています。最近、本願寺派の新しい領解文に関する騒動について、田原さんが書いた文章を読みました。「天皇にしても門主にしても昔から崇められていたものではない。天皇は近代まで一般の人は顔も知らなかった。門主にしても同様で、近代に入って『これが門主だ』ということを周知徹底するために、天皇の写真を学校に飾らせたように、門主の写真を寺に飾らせた。そして、天皇が生き神であるというのと同様に門主は生き仏である、といった印象を植え付けるようになった」との趣旨が書かれていました。また、「『東本願寺三十年紛争』を書いているときには、電車を待つ時には、ホームの一番前には並ばなかった」というようなことも書かれていました。まさにいのちがけで書きあげたと言えます、本日は、皆さんと一緒に学んでいくことがとても楽しみです。

 

 続いて、同じく共同代表の梯良彦が議長に選出され、議事に移りました。

 

1)①2024年度収支報告・②2024年度事業報告・③2025年度事業計画が事務局より報告されました。

 

2)役員会からの提案として、新しい幹事として三浦まゆみさん(岐阜教区)、美馬ひろみさん(滋賀教区)の二人が推薦され承認されました。三浦さんから就任にあたり「こういった会で役職に女性枠を作ることは初めての試みではないだろうか。ありがたく就任させていただきたい。」と挨拶をいただきました。

 また、梯より「当会の女性会員は約20%であり、役員の比率もそれに準ずる形で、今回二名の女性会員を推薦させていただいた。これからも積極的に女性会員及び女性の役員を増やしていきたい」と説明がありました。

 

(3)当会の会報である『宗アス通信~檄(ふれぶみ)~』の第7号が発刊されたことが報告されました。また、当会会員に向けて、次号会報への原稿の執筆依頼がなされました。

 

4)昨年に実施された宗会議員へのアンケートについて報告されました。

※アンケート結果は当会のブログよりダウンロードができますので、ぜひご覧ください。また、『宗アス通信~檄(ふれぶみ)~』(第7号)に「『宗門についてのアンケート』を終えて」も掲載されておりますので、こちらもあわせてお読みください。

 

 以上で総会が終了し、休憩後に研修会が開催されました。

 

二、研修会

 

 休憩のあと、フリージャーナリスト・元毎日新聞記者の田原由紀雄さんより「東本願寺・教団問題が提起したもの」と題した講演をお願いいたしました。

 

 はじめに、東西本願寺において戦前から戦後にかけて、教団のしくみがどうのように変化していったかなどの解説がありました。

それは、本派においては戦後に大きな宗制改革がなされたが、大派では、「微温的」であり「法主の宗務統括権限」や「管長制」・「連枝制」も残されたままであり、結果、その後の大派の「教団問題」へとつながっていった、というものです。

 

 次に「教団問題」の解説がありました。

1962年に訓覇信雄内局は「家の宗教から個の自覚の宗教へ」をスローガンに信仰運動「同朋会運動」を始動させました。訓覇を中心とする改革派は戦前とあまり変化のない教団のしくみは「前近代的体質を色濃く残す」ものと捉えていた。このことから、「同朋会運動」を推進するとともに「前近代的体質」の「克服」をめざす改革派と法主を中心とする保守派の対立が激化していった。その中で、近代化路線に反発する「大谷家」やその周辺には、この問題を利用して利権を漁ろうとする者たちが暗躍し、さらに事態を複雑化していった、というものです。ただし、「これは単なる教団の主導権争いではなく、教団の組織や体質そのものが問われた」ものであり、「紛争」や「事件」ではなく、まさに「教団問題」であるとの指摘がありました。続いて、これらの対立から『新宗憲制定』に至る道を、当時の取材記者でないと知り得ない、さまざまなできごとをまじえながらの解説・分析がありました。最後に、これらの改革のきっかけともなった「同朋会運動」の現在についての分析があり、「開かれた宗門づくり」であったはずの運動の停滞と、その理想と現実の乖離という問題があるとの指摘がありました。また、「教団はだれのものか、聞法教団にふさわしい組織とは」、と本派にも共通する問題提起がありました。

 

 講演後、時間に限りのある中で、質疑応答があり、会員にとって「大派の教団問題」を通して、私たちの教団をこれからどのようにしていけば良いのかを考えていかなければならないという思いが共有できた研修会となりました。

 

※当日の「レジュメ」・「資料 東西両本願寺の宗制の変遷」を

下記のリンクよりダウンロードしていただけます。

 併せてご参照ください。

 

 ・「レジュメ」

 

docs.google.com

 ・「資料 東西両本願寺の宗制の変遷」

 

docs.google.com

 

                               

 

 最後に当会幹事の福本群より、「いま、民主主義、つまり皆で考え相談して決めていくということが揺らいでいるという状況があると思いますが、そういったことは本来とても面倒くさいことなのだ、ということをこの会で学ばせていただいています。その面倒くさいことを丁寧に確実に行うこと、何かをごまかしたり、一方的に決めつけたりしないということが大切なのだと、本日の研修で改めて確認できたように思います。そのためには当然ですが信頼できる仲間が大切です。本日、三浦さんと美馬さんという女性の役員が新たに加わってくださいました。この出会いも大事にしていきたいと思います。」と挨拶があり、総会・研修会は閉会いたしました。

 

 このあと、場所を移し懇親会が開催されました。15名の参加者を得て、活発な意見が交わされました。 

 

 以上、簡略ながら「宗門の明日を考える会」第6回総会・研修会の報告といたします。

                               (文責事務局)